2022/08/31
モノが溢れ、顧客がモノを選ぶようになった今、SNSなどを通じて得られる他者の意見や評価、いわゆる口コミが購入意思に深く影響するようになっています。そのため企業では、顧客の共感を得る取り組みを行い、そこからかSNSなどを通じて口コミが広がることで共感の連鎖を生み、購買を促進する「共感マーケティング」が注目されています。
実際に、顧客からたくさんの共感を得て成功した企業は数多く存在します。「Soup Stock Tokyo」もその1つです。この企業はなぜ共感マーケティングを成功させることができたのでしょうか。
成功の理由は、ブランドのストーリーや世界観の確立にあります。人は共感するとき、ブランドのストーリーや世界観に自分を重ね合わせて考えています。したがって、共感マーケティングを成功させるためには、企業はブランドから発信するすべての情報に「一貫性」をもたせ、ストーリーや世界観を確立することが重要です。ストーリーや世界観が確立すると、消費者が受ける印象も一貫性をもつようになり、ブランド・企業らしさが生まれます。一貫性をコントロールする手法として「Soup Stock Tokyo」は、「ブランドを擬人化」し架空の女性をつくりあげました。年齢・性別・興味のあるもの/ないもの・苦手なもの/好きなものなど、詳細までその人物像(ペルソナ)をつくり込み、「Soup Stock Tokyo」に関わる従業員全員が、その架空の女性をイメージできるようにしました。従業員は入社研修の時からこの女性にとって好まれることを学び、考え、リーダーが不在の状況であっても現場主導で心地よい店舗づくりを実行することができます。
では、実際に自社で共感マーケティングを実践するにはどうすればよいのか、基本的な実践方法をお伝えしたいと思います。
まず、先述の事例と同じように、ペルソナの設計が必要です。このとき注意したいのが、年齢や性別などの属性だけで判断しないこと。例えば、同じ20代の女性でも、結婚して子育てをしている人もいれば、仕事をしている人もいれば、大学や大学院で学生として勉強をしている人もいます。そう考えれば、それぞれ経済状況も欲しいと思うものも違うのが当然です。属性だけでなく、細かい生活や気持ちまで想像したうえでペルソナを設計することが重要です。ペルソナを詳細につくることによって、社内の関係者全員のターゲットのイメージが一致し、ブランドのストーリーや世界観の確立などのマーケティング施策に一貫性が保たれます。
ペルソナが完成したら、そのペルソナにとっての共感ポイントを見つけていきます。その際の注意点として、企業目線で考えてしまうことが挙げられます。企業からすると、自分たちが頑張ってつくった機能やデザインなどを重視しがちですが、それではお客様が「欲しい!」と思うポイントから外れてしまうことがあります。例えば、吸引力が売りの掃除機が商品の場合、普段掃除をしないご主人からするとそれは魅力的かもしれませんが、毎日掃除機を使う奥さんからすると、よく吸うことよりも子どもを起こさない静かさだったり、ホコリを舞い上げない機能が魅力に感じることもあるはずです。商品を使うペルソナの目線に立ち、生活のどの場面でどう思った時にその商品を欲しいと思うかを考える必要があります。
見つかった共感ポイントを踏まえ、ペルソナ好みのマーケティング施策や販促物の制作を行います。その際の注意点が、「売りたい」を一方的に押し出さないこと。共感マーケティングの目的は、あくまで顧客や消費者の共感を得て関係性を築くことです。それをしっかり頭に入れたうえで、訴求内容の伝え方にも配慮しましょう。これにより、ペルソナと同じ性質を持った消費者の共感を獲得し、顧客の獲得に繋げることが可能になります。
共感マーケティングには、SNSの活用法といった戦術以前に、顧客の本質をとらえたペルソナ設計、そのペルソナに基づく一貫したストーリーや世界観の確立など、「共感」を生む素となる基盤づくりから考えることが必要です。私たちU-POSTグループは、顧客データの分析だけにとどまらず、データの奥に潜むココロに迫るデータサイエンスで、より踏み込んだペルソナ設計を可能にしています。さらに、そのココロに基づき最適な広告・プロモーションを立案するマーケティング、そのココロに響くコンテンツを創出するクリエイティブを通じて、「共感」を生む基盤づくりから共感マーケティングの実践をお手伝いします。